可哀そうな自分
- ギル和子
- 2020年6月10日
- 読了時間: 2分
トニーはまだ26歳なのに0歳、3歳、5歳と3人の子供がいる。
彼は決して裕福ではないが、庭師の仕事で、家族を何とか養っている。
明るくて気のいい印象を与えるが、いつも落ち着きが無い。
若いころからのアルコール依存を何とか治療で落ち着かせているものの、ニコチン依存との戦いはかなりの苦戦を強いられている。
先日、3歳の彼の息子が喘息と診断されたことをきっかけに禁煙したいと私に2回目のカウンセリングを依頼してきた。
医者から禁煙を迫られたらしいので、トニーも覚悟を決めたのだろう。
”今回は息子さんのために頑張れますか?”と私が聞くと、
彼は首を縦に振りながら”勿論勿論”と言った。
前回は挫折した禁煙だったが、今回は新しい試みのニコチンパッチでリベンジを図ると決めた。
話している最中、私は彼の視線や目力、言葉、態度全部から、’止めるための絶対理由’が見えるかどうか観察していた。
でも、弱いなーと感じた。
そして、”Are you really ready"と聞いてみた、彼はただ肩をすぼめただけだった。
その後、少し深掘りして話を聞いたところ、
彼はアルコールを止めている自分が、今度はタバコまで取り上げられるのかという、一種の恐怖感と、また新しい戦いを強いられる自分を”可哀そう”に思っていることが分かった。
「自分が可哀そう」
この言葉は普通、人は口にしない。
私もあなたもそうだと思う。
でも、どこかに自分を可哀そうに思う気持ちが
言い訳になって、困難から逃げようとしていることはないだろうか?
トニーの正直な告白に、
私も考えさせられる部分があった。
さらに話を聞いていき、本人の口から「子供のためにとりあえず始めてみる」という言葉を聞くことができた。
私は念押しして、「息子さんを愛していますね?」と聞くと
彼はニッコリ笑って「勿論!」と言ってくれた。
父親として、子供を愛しているのは確かな事だが、
息子の喘息は、まだ彼の禁煙のための’問答無用の絶対理由’ ではない。
でも、カウンセリング回数を重ねることで、トニーが禁煙したい理由に少しずつ近づいていることは確かだ。
禁煙を成功させるためにはどうしても’問答無用の絶対理由’が必要。
でもそれを急かして、彼から無理やり決めさせることはしない。
”自分への同情”について、時間をかけながら詳しく話してもらうことで、もしかすると息子の喘息が絶対理由として浮き上がってくるのかもしれない…。
あなたの禁煙の’問答無用の絶対理由’はなんですか?
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